COLUMBUS PROJECT

企画書やプレゼン資料に役立つ心理学ポイント4つ

2018年11月14日


BtoBは企業が相手のビジネスですが企業や組織といっても「人対人」のやりとりです。ロジカルやデータは大切ですが、顧客の心をどう掴み、信頼を勝ち得ていくのかもとても重要です。
そんな時に、今注目を浴びているのが心理学的アプローチです。
言葉の言い回しや相手の心を掴む見せ方など、顧客のみならず上司や後輩、チーム内のメンバー同士など仕事をする上で役立つことがあります。
もしかしたら、新たなビジネスチャンスにつながったり、これまでなかなか成約に結びつかない、売り上げが上がらない、といった分野にも貢献できるかもしれません。
何よりも心理学的な視点を理解しているだけで自分の視野も大きく広がる可能性があります。
ぜひ、参考にしてみてください。
 

ポイント1 伝えたいメッセージは複数回入れる

心理学的によく言われることですが重要なメッセージや相手に伝えたいと思う情報は、表現を変えながら何度も登場させるようにすることがよいとされています。打ち合わせやプレゼンは複数の人を対象に情報を伝えなくてはなりません。その場合、心に響く言葉や関心を止めてもらえる表現は人によって違います。同じ情報も表現や言い方を変えて何度も登場させることで、人の心に刺さっていくことができるので、一つの企画書や資料に表現を変えながら、何度も入れておくことがポイントです。では、どれくらい入れておくことがいいのでしょうか?その目安となるのは忘却曲線です。

忘却曲線

記憶研究の第一人者であるドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは人間の記憶は20分間で約58%まで失われると指摘しています。彼の作った忘却曲線では、人間はものを覚えた直後は急激に忘れてしまいますが、徐々に緩やかになっていきます。つまり、人間の記憶はある程度時間が経つとゆっくり忘れていくという性質があるということです。
失われていく情報の中でも記憶に残りやすいのは印象の強いこと、そして繰り返し見聞きしたり体験したりしたことです。
そこで、打ち合わせやプレゼンで情報をしっかりアピールするには最初の20分間に重要な情報を何度も繰り返し提示して相手の記憶に強く印象づけるようなアピールが必要です。そして、20分後に表現を変えてまたアピールすることで、記憶に強く残していくことができます。

カクテルパーティー効果

カクテルパーティー効果とは、人間の脳は複数の情報が入り乱れる中にあっても自分に関係のある情報のみを選別できるという聴覚効果のことです。
人にはそれぞれ聞き取りやすい言葉やキーワードがあるので、この理論を上手に使うことができれば相手とのコミュケーションがより円滑に進めることができます。
たとえば、プレゼンや打ち合わせで商品の説明をする時や、強調したい情報などに取引先の社訓やスローガン、指標などのキーワードを盛り込む、相手側でよく使われているフレーズなどがわかればそれを取り入れるなどするとより一層相手の心に入っていくに違いありません。
 

ポイント2 欠点は最初に伝える

新製品や新規企画をプレゼンするときは、製品や企画に欠点や改善すべき点、マイナス評価になりそうなデメリットがあるならそれを最初に伝えると誠実さの大きなアピールになります。本来なら隠したいくらいのマイナスポイントを先に明かすことによって、正直で誠実な人だと思ってもらえるのです。

心理的リアクタンス

リアクタンスとは「抵抗」を意味します。人は自分の行動や選択を自分で決めたいという人間本来の欲求があります。これを犯されると思うと、無意識にこの「抵抗」が発動してくることを心理的リアクタンスといいます。
反発心は人間本来の欲求です。自分に対して発せられた情報に対して人は多少なりとも反発しようとします。あえて先にマイナスとなる情報を伝えることで相手はその情報に反発します。マイナス情報に反発するのでプラスに変わるというわけです。

後から聞いた情報の方が記憶に残りやすいという効果とも相乗するので、欠点や問題点は最初に伝えることがベストです。
 

ポイント3「損をさせない」というメッセージを伝える

人は、損をするか得をするかわからないというリスクを伴う意思決定に直面するとどんな選択をするのか、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが「プロスペクト理論」という中で検証結果を発表しています。

プロスペクト理論

プロスペクト理論とは「人は、自分が得をする時は確実性を重視し、損をする時は博打に出る行動をとる傾向がある」というものです。
この検証では、同じ金額ならば、自分の利益となった満足よりも、損失になった悔しさの方がより強く印象に残り、損失を回避しようとする行動をとるといいます。つまり、人は得をする喜びよりも損をする恐怖の方が強いということです。
今では個人投資などでよく話題に出るプロスペクト理論ですが、人は物を購入する時に「得をする」よりも「損をしない」選択肢を取ろうとします。売る側は、この不安を取り除くためにもまず何よりも自分自身が自信を持ってプレゼンをすることが大切です。自分の商品は必ずクライアントにとって、お客様にとって価値あるもの、人生を高めてくれるもの、そう思って伝えるべきです。
具体的には次のような方法もあるでしょう。

  • 専門家の声を活用する
    「買って損をしたくない」という気持ちがあるので、安心感を得るために自分よりも詳しい人、つまり専門家の意見を聞きたがります。
  • リスクリバーサル
    買う側のリスクを売る側が背負うことで、「自分は損はしない」と思ってもらうようにします。
    たとえば、「〇〇日間試してみて満足いく結果とならなければ全額返金します」「好きな時にいつでも返品してください」「○日間無料お試し」などがあげられます。

 

ポイント4 迷わず決断できる選択肢を提示する

かつて会社のプロジェクト予算を会議で通すために、役員会に出した資料で使った手法です。当時、経費削減のために新プロジェクトを通すことが難しく、気の重い会議でした。そんな時、上司が「松竹梅で行こう」と言ったのです。
人は3つ選択肢があると真ん中を選びやすいということでした。竹に自分達が一番ほしい妥当な予算額を。松は高め、梅は低めの予算額を提示します。会議では揉めることなく大変スムーズに竹の予算額で通りました。
3つの選択肢があると中間を選びやすいという現象を「コルディロックス効果」といいます。

ゴルディロックス効果

ゴルディロックス効果とはイギリス「ゴルディロックスと3匹のくま」という童話から名付けられました。ゴルディロックスという少女が3つの中からちょうど良い加減の物を選んでいくというお話です。
セールスでは商品に関する情報が少なくて、かつ価格帯の選択肢がふたつしかない場合は約70%の人が価格の安いものを選び、価格帯の選択肢が3つになると中間のものを選びやすいという現象です。
選択肢が多いと、人には迷いが生まれて選べなくなり、「現状維持の法則」が働いて、買わないという結果になってしまう場合があります。
人が迷わずに決断できる選択肢は5つまでとも言われています。プレゼンや会議で何かを選んだり、決定してもらったりする時などは3つまたは5つまでに絞ると相手が選びやすくなります。
 

企画書やプレゼン資料は種類別に作成し、シンプルに

企画書やレジュメなどの資料はプレゼンや打ち合わせには欠かせません。こうした資料作成にありがちなのが、情報を色々と詰め込みすぎて膨大な量になってしまうということです。数字やデータだらけで学術書のような分厚さになるという経験はよくあるのではないでしょうか。
そもそも、企画書をベースにしてミーティングなどでやり取りしながら作り上げていくものではないでしょうか。完璧すぎると思わせる企画書よりも、ミーティングの話が弾むような企画書の方が参加したメンバーにも、プロジェクトを一緒に作り上げたという達成感があります。軸となる企画の骨子がしっかり書かれていることが大切でしょう。
企画書は「シンプルかつ論理的にポイントをまとめたもの」と「検証結果や統計結果のデータ集」「街の声やプロジェクトの経過、設立主旨などストーリーのあるもの」など、3種類程度の資料を用意し、会議の参加者やプレゼンする相手の特徴などから使い分けてみるのもいいと思います。
最初に全部の資料を提示した方が安心感を与えられる場合もありますし、「こんなにあるのか」と読む気力を無くされてしまう場合もあるので、ケースバイケースです。プロポーザル資料の場合、ポイントをまとめたもの、データ集、会社実績集などある程度ボリュームのある資料を作っておいて、ポイントだけまとめたもので説明し、後ほど資料に目を通してもらうなどということをしたこともあります。社内会議ですと、分厚いデータ集は最初は見せずに、質問がある時に出すということもありました。
 
上記の心理学的ポイントなども取り入れながら、いろいろ実践してみてください。

参考文献
『相手を変える習慣力』 三浦 将/著 クロスメディア・パブリッシング出版 2016/8
『一瞬でYESを引き出す心理戦略。』 DaiGo/著 ダイヤモンド社出版 2013/8
『植木理恵の人間関係がすっきりする行動心理学』 植木 理恵/監修 宝島社出版 2016/8
『今日から使える行動心理学 スッキリわかる!』 齊藤 勇/著 ナツメ社出版 2015/6

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