COLUMBUS PROJECT

BtoBマーケティングで最初に取り組むべき2つのステップ

2019年1月15日


 

BtoBマーケティングを実施するための手法はたくさんあります。Webではコーポレートサイト、ランディングページ、オウンドメディア、SNS、動画サイトなど表現方法はさまざまです。Webだけでなく展示会やセミナー、イベントの開催や参加などもあります。また、マーケティングを進める上での分析や調査手法も多様に存在します。
どの手法が自分たちの事業に最適なのか、また現在進めているマーケティングの何を改善すればさらに成長できるのか、または成果をあげることができるのかと日々模索しているマーケターの方も多いのではないでしょうか。
今回は、BtoBマーケティングで的確な施策を打つことができるために、何を準備しておけばいいのかについてご紹介したいと思います。
 

1.BtoB市場の特徴

まずはBtoB市場の特徴を簡単に整理してみたいと思います。BtoB市場はBtoCとは違う特徴がいくつかあります。それを以下にまとめてみました。

  • 民間企業、官公庁、機関などの市場。
  • 顧客数が特定された市場の場合がある。
  • 買う側が売る側と同等の知識またはそれ以上の知識を持っている場合がある。
  • 購買目的は「コストダウン」「品質アップ」「売上拡大」など、事業の戦略実現。
  • 購買の意思決定は個人ではなく組織によって評価・判断される。
  • 購買対象は顧客独自の特注仕様に基づいてカスタマイズされた受注製品が多い。

BtoCと比べると、市場や購買目的、意思決定などに違いがあることがわかります。この特徴をおさえながら、BtoBマーケティングを実施するために必要な準備について考えていきたいと思います。
 

1 自社分析

事業の現状掌握がまずはじめに行うことです。新規事業であっても同じです。ここでは現状掌握として、経営戦略のフレームワークである4C分析を使って現状を掌握する手法を紹介します。

4CとはCompany(会社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Context(マクロ環境)の頭文字をとった名称です。一般的な3C分析にマクロ環境分析を追加したものです。では、それぞれの項目を詳しくみていきたいと思います。

Company(自社)分析

自社に関する分析をしておきます。現状の事業領域や会社として将来的にも守っていきたい、提供していきたい価値観などのビジョンを確認します。自社の価値観を認識しておくことは今後の対象調査がよりはっきりとしてきますし、事業の戦略にブレもなくなります。

こんなエピソードがあります。
老舗の大手メガネ販売店が低価格販売店の台頭により業績が低迷、上場廃止の危機に直面しました。この時、会社として社長を中心に、もう一度どのような価値を提供する企業であるべきか、自社のビジョンを見直すことにしました。
そして、価格競争路線から脱却し、長年培った眼に関する豊富な知識と経験、老練な技術者陣を強みとした眼に関連する悩み全般を解決する「アイケアカンパニー」路線へと転換し、営業利益を黒字に回復することができたのです。

ビジョンを確認すること、または見直すことで何を大切にしたいのかが明確になり、事業の活路を開くこともできます。また、調査対象とすべき顧客や市場、競合や業界の線引きをすることもできます。合わせて自社の独自のスキルや技術なども抑えておけば、新たな市場を見つけるきっかけにもなるでしょう。

Customer(顧客)分析

市場セグメントの分析と主要セグメントにおける顧客ニーズを検討します。
BtoBにおけるセグメンテーション(市場細分化)として以下のような変数を参考として紹介します。
市場分析は商業統計、自治統計、各種年鑑、業界紙、新聞・雑誌、webサイト記事、データ会社の企業リストなども参考として使えます。

BtoBにおける市場細分化

  1. 産業に関する市場細分化変数(産業、産業区分、業態、業種)
  2. 企業に関する市場細分化変数(企業規模、戦略的ポジション、対象市場、地理的要素)
  3. 購買状況と行動に関する市場細分化変数(購買対象に対する知識レベル、購買対象物の重要度、購買量や購買頻度、購買単価)

参考までにBtoCの一般的なセグメンテーションも紹介しておきます。

BtoCにおける市場細分化

  1. 人口統計変数 (年齢、所得、性別、業種)
  2.  地理的変数 (国、都市、地域、地方)
  3.  心理的変数 (ライフスタイル、価値観、関与、態度、関心事、性格)
  4.  購買行動変数 (目的、購買頻度、購買経験、知識)

セグメンテーションの中からさらに主要なセグメントを絞り込み、主要顧客のニーズについて検討しておきます。顧客ニーズはカスタマージャーニーマップを作成するのも有効です。
カスタマージャーニーマップについてはこちらを参照してみてください。

Competitor(競合)分析

競合分析として5フォース分析が有名です。
5フォース分析とはアメリカの経営学者、マイケル・E・ポーター氏が『競争の戦略』という著書で発表した業界の競争要因分析のフレームワークです。次の5つの要素で業界構造について分析します。
5フォース分析によって自社を取り巻く競争環境を明確にしておきます。

1. 新規参入者の脅威
新規参入者の脅威とは参入障壁がどの程度高いかということです。例えば規制緩和は参入障壁を低くするため、競争を誘発しやすくなりますが高い利益率が急激に低下する要因にもなってしまいます。

2. 代替品の脅威
代替品の脅威は、競合する製品そのものではないですが、現在提供している製品そのものの存在意義をなくしてしまうような製品だと考えられます。例えば、雑誌や新聞などに変わるものとしてスマホアプリやデジタルコンテンツなどが代替品として登場しています。食品業界ではマクドナルドに対してラーメン、牛丼、うどんなどのファストフード店や回転寿司店、コンビニ弁当なども代替品と言えます。

3.買い手の交渉力
買い手の交渉力は買い手の数や業者を代えるために必要なコストであるスイッチングコスト、買い手が十分な情報を持っているか、製品の差別化などが買い手の交渉力の強さを決めます。買い手の交渉力が強いと希望価格より低価格で提供することになり、利益率が低下してしまいます。

4.売り手の交渉力
企業は製品を作るために部品や原材料、サービスを仕入れ・調達する必要があります。この材料やサービスの供給者(サプライヤー)は自社への売り手です。この売り手が業界で力を持っている場合や、売り手の業者数が少ない場合、独占的技術を持っている場合などは仕入れコストが高くなることが多くなります。自社の収益性が悪化する要因になるのです。

5.既存企業間の競争
既存企業間の競争は既存同業他社との競争です。同業者が多く存在している業界や差別化しにくい業界、コストが高い業界、撤退しにくい業界などは競争が激しくなります。

Context(マクロ環境)分析

マクロ環境分析は、政治、経済、社会、技術、環境、法律が含まれます。
一般的にはそれぞれの英語の頭文字をとってPESTEL分析というフレームワークがよく使われています。PESTEL分析とは市場を取り巻く政治的(Political)、経済的(Economic)、社会的(Social)、技術的(Technological)、環境的(Environmental)、法的(Legal)の6つの外的な要因を分析する方法です。
例えば、政治的要因としては課税方針の変化や自社に関係する法律の制定、経済的な要因には物価の動向や金利の変動があります。社会的な要因はライフスタイルの変化や人口変化、法的な要因には個人情報保護法や商法などが関係します。
海外展開などを想定している事業についてはPESTEL分析で市場に影響を与えそうな海外の動向を押さえておくのもいいでしょう。
 

2.STP分析

次に、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)で対象市場とそのニーズ、提供する価値を明確にします。
セグメンテーションは顧客分析ですでに検討済みなのでその軸をそのまま使うか、分析の結果新たな事業領域が出てきた場合は新しい事業領域でもう一度セグメンテーションを行うことになります。
ターゲティングは細分化された市場の中からどのセグメントをターゲットとするか決定していきます。絞り込みを行う場合は、市場の成長性や競争状況、市場規模といった観点と購買決定要因が自社の製品やサービスとどれくらい適合しているかなどをベースに判断します。
この時、市場をどの範囲にするのか設定しますが、顧客の数が限定的で個々のニーズに独自性が高いことが想定される場合はone-to-oneマーケティングを展開していくことになると思います。その際はセグメント毎というよりは個別の顧客毎の検討が必要となります。
ポジショニングでは決定したセグメントの中にある他社の競合製品・サービスと自社の立ち位置を決めていきます。ポジショニングを検討するに当たって以下の手順を参考にしてみてください。ポジショニングは1回で決定できる時もあれば、何度かポジショニングを繰り返してもっとも最適な立ち位置を決定する場合もあります。

  1.  ターゲット顧客が比較検討する可能性の高い競合他社製品を洗い出す。
  2.  ターゲット顧客が製品選定の基準とする購買決定要素を書き出す。
  3.  競合他社の位置付けをする。
  4.  競合製品と比較しながら自社製品のポジションを検討する。
  5.  ターゲット顧客の基準と自社製品のポジションの適合性を判断する。

STP分析の詳細についてははこちらの記事も参考にしてみてください。

最後に

もしかしたらこんなに分析しなければならないのかと、若干感じてしまったかもしれませんが、自社やチームの現状分析や顧客について徹底して深掘りしておけば、企画が進んで新たな問題が生じたり、横道にそれてしまった時などに立ち返ることができるので大変に重要です。
最初は荒削りな分析しかできなかったり、顧客の情報を集めるのに時間がかかったりすることもあるかもしれません。ですが、限られた時間の中でもわかる範囲で分析や調査を進め、チームで話し合いながら項目を埋めておけば、プロジェクトを進めながら自分達の施策を見直す軸にしていくこともできるので、取り組んでおくことをおすすめします。
このステップと合わせて、事業目標や事業領域の検討や設定なども行っていくことになると思います。目標設定のポイントなどについては、今後またご紹介したいと思います。

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